移民政策について

少子化は日本にとってプラスであるし、そのような社会体制を取るべきだ。とはいえ、ここではその論は進めない。
彼らは手弁当で日本に住み、労働力を提供するわけではあるまい。我々と同じように、スーパーで買い物をし、コンビニ弁当(高い!)を買い、インスタントラーメンを食べるのである。満員電車に乗り渋滞に巻き込まれながら出勤し、テレビを見てお湯を沸かしお風呂に入り、祖国に送金をするのである。原材料や加工済み食品を買うために支払う外貨、原材料や燃料を運ぶために支払う外貨を、彼らは稼ぎ出せるのだろうか。米国では、メキシコ移民が家事手伝いやベビーシッターや庭師になり、もっと高度な職業は白人が行っている。同様に、単純労働を移民が行い、外貨を稼げる仕事を、先住日本人が行えばよいと言えるのだろうか。それとも、外国人に日本に来てもらい、直接外貨を稼いで貰おうとでもいうのだろうか。
単純労働の移民について考察する。単純労働は、語学能力がほとんど不要な労働のことである。こういった安価な労働力がなければ利益が出ないビジネスについては、商材を変えるか他地域に転出する必要がある。また、産業の効率化、自動化を選択した場合、発明した財を海外に輸出することも可能である。これらの手段を取らずに移民を求めるのは、安直な選択を行っているということでしかない。単純労働によりより高度な職に先住日本人が移行できるという論については、そのような市場(結局、大企業への就職となる)は既に競争状態にあり、新卒採用志向の残る日本においては有効でない。高度技能職ですら、第二次産業はすでに海外に移転済みである。既に就労査証保持者や留学生、研修生がいなければ現場は回らないとあるが、そのような業種は海外に移転してもらって構わない。日本人が家族と生活できるだけの雇用を生み出さない業種など、害悪でしかないのだ*1。安くサービスを享受したいのであれば、その国に行けばよいのである。
高度な技術をもった移民について考察する。そもそも日本においても、高度な技能をもった人材はアメリカ等に流出している。これは、そういった人材に適切な給料を支払っていないためである。年功序列型賃金制度を廃止するのが先である。外貨が稼げる移民は、祖国の発展のために働いて貰った方が良い。日本の人口が6〜8000万人程度まで減らなければ、自給自足はできないのだから、海外に物を売りつけるしかなく、そのためには売りつける先に現金を持たせる必要がある。これまでは地下資源や農作物を輸入することで現金を持たせ、日本製の工業製品を売りつけてきた。金をより持たせるため、産業を殖産させて市場を拡大させてきたのだ。海外市場を拡大させ、日本独自の製品を売りつけること*2により、工業製品や地下資源や基軸通貨を入手し、燃料を買うことが必要である。海外にインフラ投資を行い、それを回収する形での投資行為を行う場合、内部に優秀な人材がいないと踏み倒しのリスクが高まるというのもある。そもそも、自国民を他国に出稼ぎに出さなければならないというのは国辱である。ASEAN諸国に国内産業が存在しないことがその理由なのだから、産業を振興させるのが筋だろう*3
そもそも日本人が3Kの仕事をしないことが問題だ、という話もあるが、需要が供給を上回る場合、賃金水準を上げるのが正しい解であり、そうなっていない状況を正す必要がある*4
人口増による内需拡大、という論については、短期就労であれば国内で消費する額を最小にして仕送りを行い、永住であれば在日ブラジル人と同様、子弟教育の問題、青少年犯罪の増加、就労時のトラブル、年金問題などが生じ、社会保障コストは日本人よりかかること、継続的に若い人間を入れるか、若年層が家庭を持てる生活環境を用意しない限り、高齢化が再び発生することを考慮されたい。
移民受け入れのデメリットについて述べる。
移民することは、祖国を捨てることであり、祖国をより良くしようとする努力を放棄することである。移民してきた人材が、受け入れ先の国家に対して忠誠を誓うだろうか?移民一世は、受け入れてくれたことに感謝するだろう。だが、移民した人間が家族を作り、日本社会で暮らしていくとき、先住日本人と同じだけの生活水準と尊敬を得ることができるだろうか?移民二世や三世は、宗教や肌の色、生活水準の違いにより排斥され、それゆえ反社会的な行動を取ることになる。出身民族に回帰を求め、日本人であることを拒む国民をどのように同化させるのか。フランスが直面している問題であり、解決策は出ていない。永住せず出稼ぎとすれば良いという話もあるが、彼らも日本で恋をし家庭を作ることもあるのだ。
移民肯定論者は、安価で良質な労働者が欲しいのであって、移民労働者にまともな人権を与えるつもりは無い。企業が雇用を打ち切ったら即座に不法入国者になる仕組みで母国に帰す費用を国費による強制送還で代行させ、さらに、他の企業で雇用打ち切りになった不良人材を採用してしまうリスクを、入国管理制度によって排除しようという打算によっている。現状でも外国人研修制度が悪用され、最低賃金以下で酷使されている現状を鑑みるに、その被害者を拡大させる結果になる可能性が大である。百歩譲っても、パブで働くねえちゃんを増やす結果になるだけである。
優秀な移民を低コストで受け入れることはできない。そのような人間は、基本的に、家族とともに暮らし、祖国のために尽くすか、より高い給料を出す国に移住する。既に移民を受け入れてくれる国同士は賃金競争を行っている*5。英語ではなく日本語をわざわざ学ばねばならず、生活コストが高く、受け入れ業種が日本人に支払う給与はアメリカで移民に支払う給与より低く、社会保険制度上、賃金上昇は行われない。専門学校卒の日本人を使い潰し、顧客は外国人を見下す態度を取る、さらにチップもない日本に来るのは、英米に行けなかった人間である。その一部が他業種に不法に転職したり、サイドビジネスとして不法転職者を搾取することも、当然発生する*6
高度な技術を持った人材のみの受け入れに成功したとしても、その業界内で働く労働者の賃金水準は低下する。物価水準は他の産業の賃金が低下しないため、ほぼ同じなのだから、先住日本人の生活水準を下げることになる。移民同士の互助ネットワークが存在するため、口コミで良い雇用機会を他の移民に提供し、結果として先住住民の就職幅が狭まる傾向もインドで生じている。そもそも、移民として金を稼ぎに日本に来て、母国に送金して不動産を買い、帰国して優雅に暮らそうという希望を持つ人間と、家庭を持つこともままならず過当労働で将来に希望が持てない人間が、同僚として仲良く働けるのだろうか?同業種の外国人が受け入れが決まりそうな業界の労働者は、早急に組合を形成し、ロビイングを実施すべきである。
移民に参政権を与えた場合、自治体の乗っ取りが行われる可能性がある。オウム真理教波野村への移住、イスラエルへのユダヤ人の移民、チベットにおける漢民族の移住などが実例である。日本においては、対馬や沖縄、北海道が解放の対象となろう。そうでなくとも、移民がなんとかタウンを形成し、日本語を勉強せず理解もせず、ゴミ出しや銭湯のルールを守らず周辺住民との軋轢を発生させることになる。移民のネットワークが発達することにより、不法滞在者をかくまう現象も台湾で生じている。
移民は全員が移住するわけではなく、祖国に親戚や家族を残してやって来る。そして、入手した外貨を祖国に送金する。送金された外貨はその国の中で消費されるため、日本にとっては外貨流出となろう。相手国にとっても、送金により移民排出のインセンティブが高まり、通貨レートの上昇により産業基盤が破壊されることになる。さらに、海外送金のために不可欠となる地下銀行システム*7が構築されると、その匿名性から、武装勢力の資金源やマネーロンダリングの温床になる場合がある。
合法的な移民が、不法滞在者を搾取するという現象も生じる。不法滞在者に対して、債務を負わせ、家族を殺害するという脅迫を与えた上で肉体労働や売春を行わせ、結果、HIVに感染する事例が日本で生じている*8不法滞在者のブローカーに移民が関わるようになり、人身売買の規模が増加するものと思われる。
最後に、移民政策は国内政策とは異なり、一旦やり始めたら取り返しがつかないものである。かつ、悪影響が顕在化するのは世代交代が行われた後になる。欧米や米国は移民制限を行っており、これらの国の動向*9を注視しながら、慎重に議論を進めていく必要がある。とはいえ、これまでの論のとおり、日本の人口がよほど減らない限り、不要なのだが。
文化の観点で移民を論じる。
文化とは、言語であり、ファッションであり、食である。大阪弁であり、コンビニ弁当であり、ラーメンであり、カレーであり、キャミソールであり、AAであり、日本円である。あまりに密接に生活に直結しているため、それを奪われることに全力で抵抗するものである。特に、言語圏と通貨圏は国土と直結するため、死守すべきものであるという立場を採る。
文化には、安全保障の側面も存在する。過去、日本は高品質な工業製品を海外に輸出し、日本に依存させることで安全保障を手に入れてきた。ただし、現在は円高新興国の台頭が生じているため、この手段は使えない。現在は、ACG*10や食文化を中心とした文化攻勢により、親日派を世界中に作る、という手法を採用しようとしている。民主主義政体を採用している国に対しては、相手国の民衆を味方(ファン)にすることにより、戦争を抑止できる。識字率が高く、単一言語圏で人口が多い国家である日本は、文化的に優位な位置に立てる立場にあり、事実、いくつかの分野では世界最先端である。日本語学習者を世界中に増やし、インターネット時代における、文化の世界共通言語*11としての地位を確立することが目標となる。常に革新が続く情報を、webを通じて無料で入手できる状況におくことが重要である*12。時代は、ポジティブな情報戦に突入しているのである。加えて、非民主主義国に対しても民主主義的価値観を伝道し、民主化を促進するという要素もある。
攻め文化促進は、経済的にも有効である。海外に文化伝道を行い、その国民を日本産コンテンツ漬けにすること、そして海外企業にコンテンツのスポンサーをさせ、広告経費として吸い上げることにより、企業の研究開発費や納税額を減らし、技術優位を維持し続けることができる。さらに、日本独自の生活文化や食文化の受け入れが行われることにより、工業製品や食料品の輸出が反感を買わずに行うことができるようになる。貿易摩擦を引き起こさずに外貨を入手できるのである。
文化の交流が必要という意見があるが、文化の独立性・独自性も同じだけ重要である。将来的に、移民により世界の文化状況が均一化されたならば、国力が強い国の発言力が強くなるだけである。
インターネット以降、情報を流すために人や物を届ける必要は無くなった。移民や留学生を受け入れずとも、日本に関する情報を伝達することは容易になった。当然、逆も言える。親日派に転向させるため、留学生を受け入れたとしても、母国との繋がりは残り続けるため、昔ほどの効果はない。音楽や物語などの文化も、人を介さずに触れることが可能である。
多文化共生ともあるが、複数の国家から移民を募る場合、宗教や国家の対立が日本に持ち込まれることになるリスクも考慮しなければならない。例えば、インドネシアとフィリピンは、それぞれイスラム教とカトリックが大半を占める国であるが、イスラム原理主義者による分離独立運動やテロが発生している。新たな緊張関係が国内に発生する可能性があるのだ。
共に側で暮らすという意味で、移民は結婚と等価なものだ。お互いを尊敬し、尊重する姿勢が無い限り、うまくいくはずがないのである。例えば日本のAGCや食文化中毒になったアメリカ人が日本で働き暮らす、という理由での移民ならば、うまく日本での生活にとけ込める可能性は高い。一方、お金*13のために移民を行うのであれば、高い金を出してくれるならばどこでも良いとなり、互いの文化を尊重する気にはならないだろう。特に、国境問題で対立している国家、反日教育を行っている国家、日本に住みながら共生を拒む民族について、決して移民を認めるべきではない。日本で犯罪を犯した人間が英雄扱いされることで、関係が冷えるばかりでなく、暴動に発展する恐れすらある。
多文化の共生があり得るとすれば、平和な状態が長く続き、民衆同士の交流が続くことで、国境の意味が喪失した後になるだろう。現在の欧州のように、同一の国家であった時代、同一の宗教バックグラウンドを持った上で、かつ、情報が国境を越えて互いに伝わり、ビザ無しで国境を越えて問題ない状態を長く続けて、はじめて、融和が可能になったのだ。
確かに、新しい人種、民族が日本社会に参入することにより、直接、音楽や物語、さらにデジタル化不可能な文化を得ることが可能になるだろう。移民自身が、日本において芸術活動を行うことで、文化的な多様性を得ることも可能だろう。だが、それは、「コーヒー園から人材派遣会社まで一世紀に渡って奴隷制が国境を越える」ような犠牲も同時に産むのである。介護のような過重労働から逃げだし、不法滞在者として働き、教育を受けられず日本語を読み書きできない子女を作り、排斥を産む。このような課題、それも世界のどの移民受け入れ国も解決していない問題を抱えた上での文化ならば、不要である。
論をまとめる。
移民導入による経済振興は、若年層の人口ピラミッド保持、すなわちインフレを前提とした社会体制を維持するだけの結果になるため、若い世代の人間は、反対すべきである*14
人は、自ら生まれ育った故郷で、故郷のために生きることが望ましい。故郷を捨てるのならば、少なくとも移住先の文化に適合し、軋轢を生じさせないようにすべきである。

*1:代替業種として、株式会社による農業産業と、コンテンツ産業を新興すべきである

*2:または海外市場への投資

*3:海外に介護施設を建設し、日本人を誘致した方が、労働者が家族と暮らせる分人道的である

*4:そもそも、豊かな暮らしができないのは物価高が原因なのだから、それを是正する、というのも正しい解である

*5:米国では出稼ぎ看護師の月収は4千ドル程度。フィリピンの新聞は社説で日本の看護師の初任給は平均3121ドルであり米国より300ドル高いと言っているが、人手不足な病院は20万円台の給与しか出せないと思われる。日本人と同程度の給料しか払わないらしいので

*6:特に、英語が公用語でない国からの受け入れを行い、日本語能力検定がザルである場合、日本において助けを求めることも難しいことに留意すべきであろう

*7:ハワラ等

*8:ILO報告による

*9:特に島国である、イギリスや台湾

*10:アニメ・漫画・ゲーム

*11:打倒English

*12:コンテンツクリエータに金と時間を与えること、過去の作品を容易に閲覧可能にすること、多数の批評者による開かれた批評の場を用意することも、必要条件

*13:や安全保障

*14:看護師は男性看護師を増やせば良く、方法としては、医師資格の要件に看護師としての実務経験を含めれば良い。介護については、要介護者が自殺する以上経済的なものはない。家制度の復活にも時間がかかる